おすすめしたい韓国の本
福田 知美
キム・ジョンウク探し
ここでは、私が興味深いと感じた韓国の本や今韓国で話題の本を毎月紹介していく。この記事を通して、少しでも多くの読者の方に韓国の良書を知って頂き、韓
国に親しみを持って頂ければ嬉しく思う。
これまで「おすすめしたい韓国の本」ではノンフィクションを主に扱ってきたが、今回は小説を紹介していきたいと思う。今月の本は『キム・ジョンウク探し
(原題:김종욱 찾기)』という恋愛小説で、初恋の相手を探そうとする女性とその初恋探しを助ける男性との恋愛を描いた作品だ。
小説『キム・ジョンウク探し』のあらすじ
旅行雑誌を取り扱う出版社に勤めていた29歳のヒョジョンは、意見の違う編集長と対立して会社をクビになってしまう。職を失ったことを両親になかなか言
うことができずヒョジョンは右往左往するが、ある日彼女の目に突然「あなたの初恋を探します」と書かれた広告が飛び込む。広告に書かれた会社を訪ねるとそ
こにはソンジェという男がいた。ヒョジョンは広告を見て自分の初恋を思い出し、ソンジェと初恋の相手を探しに行くことを決意する。
原作はミュージカル
『キム・ジョンウク探し』は韓国で出版されて間もないが、実はこの小説には原作がある。それは有名な劇作家、チャン・ユジョンが手がけた「キム・ジョンウ
ク探し」というミュージカルだ。ミュージカル「キム・ジョンウク探し」は2006年6月の初演以来、屈指の人気を誇る作品となり現在まで約30万人の観客
を動員してきた。その高い人気から「キム・ジョンウク探し」は小説化と映画化が決定され、昨年11月に小説が出版され、12月には映画が公開されている。
この記事で紹介している小説『キム・ジョンウク探し』は若手の作家、チョン・アリが手がけたもので、若い感性によって男女の微妙な心の動きが描かれた作品
となっている。映画は韓国で12月8日に公開され、1月5日の時点で観客動員数が110万人を突破しており、現在はアメリカでも公開されている。
映画との違い
映画『キム・ジョンウク探し』と小説は登場人物名が異なり、設定もやや違う。小説では主人公の女性の名前がキム・ヒョジョン、初恋探しを手伝う男性の名
前がイ・ソンジェだが、映画では女性がソ・ジウ、男性がハン・ギジュンという名前になっている。また映画の設定ではソンジェが初恋を探す事務所を開設して
いるが、小説ではソンジェは小規模の広告代理店を起業している。ヒョジョンの初恋探しの手伝いを引き受けたのは偶然であり、この違いから生じるストーリー
も小説の見どころの1つとなっている。
題名:キム・ジョンウク探し
原題:김종욱 찾기
頁数:268頁
小説著者:チョン・アリ
原作者:チャン・ユジョン
出版社名:ノーベルマイン
発行日:2010年11月22日
小説著者紹介:1986年生まれ。現在、延世大学に在学中。中学・高校時代から文学思想社青少年文学賞や青い作家青少年文学賞を始めとする様々な賞を受賞
する。大学進学後も執筆活動を続け、2008年には世界青少年文学賞を受賞した『おり姫の日記帳』を出版。その他にも『時計塔』や『楽しい遊び』などの小
説を出版している。
原作者紹介:ミュージカル界で高く評価されている監督であり、劇作家でもある。「キム・ジョンウク探し」「オー!あなたが眠っている間に」「兄弟は勇敢
だった」の脚本・作詞・演出を手がけた。また「キューティーブロンド」を演出し、映画『キム・ジョンウク探し』では監督を務めた。