名訳とは名翻訳家







独断と偏見で選ぶ翻訳ベスト50候補

山岡洋一


翻訳の質が低くても本は売れるし、翻訳の質が高くても本が売れるわけではないといえる状況がある。この現状を嘆いているだけでは何も変わらないので、名訳 を紹介し、「翻訳家の値打ち」を考えるきっかけにしてもらおうと考えている。

 

ベスト50候補
 
小尾芙佐訳 キング著『IT』 文春文庫
小尾芙佐訳 キイス著『アルジャーノンに花束を』 ハヤカワ文庫 短評 批評
小尾芙佐訳 レンデル著『死を誘う暗号』 角川文庫
上田公子訳 トゥロー著『推定無罪』 文春文庫 批評 短評
上田公子訳 トゥロー著『立証責任』 文春文庫
上田公子訳 デミル著『将軍の娘』 文春文庫 批評 短評
上田公子訳 デミル著『ゴールド・コースト』 文春文庫
村上博基訳 マクリーン著『女王陛下のユリシーズ号』 ハヤカワ文庫 批評
村上博基訳 ル・カレ著『スクールボーイ閣下』 ハヤカワ文庫
村上博基訳 ル・カレ著『スマイリーと仲間たち』 ハヤカワ文庫 批評 短評
村上博基訳 ル・カレ著『影の巡礼者』 ハヤカワ文庫
村上博基訳 クランシー著『容赦なく』 新潮文庫
土屋政雄訳 マコート著『アンジェラの灰』 新潮文庫 批評 短評
土屋政雄訳 オンダーチェ著『イギリス人の患者』 新潮社
土屋政雄訳 イシグロ著『日の名残り』 ハヤカワepi文庫 短評 批評 批評
芝山幹郎訳 キング著『ニードフル・シングズ』 文春文庫 短評 短評 2 批評
芝山幹郎訳 キング著『不眠症』 文藝春秋社
芝山幹郎訳 ウィル著『野球術』 文春文庫
芝山幹郎訳 グールド著『カクテル』 文春文庫 批評
宮脇孝雄訳 ダニング著『死の蔵書』 ハヤカワ文庫 短評
池央耿訳 メイル著『南仏プロヴァンスの12か月』 河出文庫 批評 批評
小川高義訳 ゴールデン著『さゆり』 文春文庫 批評 批評 2
岸本佐知子 ベイカー著『フェルマータ』 白水社
岸本佐知子 ベイカー著『中ニ階』 白水社 批評


次点候補
酒井昭伸訳 シモンズ著『ハイペリオン』 ハヤカワ文庫
酒井昭伸訳 シモンズ著『『ハイペリオンの没落』 ハヤカワ文庫

以上は、原著を読んで翻訳の質を確認できたことを条件としているので、英語からの翻訳に限定している。訳書を入手できることが条件なので、絶版に なっているものは除外せざるをえなかった。また、原則として、現代の翻訳家を対象にし、物故者は除外している。

ずいぶん偏りがあると思われるだろうが、それは、「原著者が日本語で書くとすればこう書くだろうと思えるものになっているか」を基準に、訳書と原著 を読み、翻訳の素晴らしさに感動したもの、憧れるものだけを選んでいるからだ。また、憧れというのは何よりも人に対するものなので、素晴らしいと思った翻 訳家の作品をつぎつぎに読んでいく。このため、翻訳家の数は少なく、ひとりの翻訳家の作品がいくつも並ぶことになる。

いまのところはまだ、翻訳家の数も不足しているし、作品の総数も50に達していない。今後、作品の数を増やすとともに、ベスト50に選んだ作品の翻 訳について、少しずつ書いていきたいと思う。